kshinshin's blog

ヨモヤマ話

映画「1408号室」

ジョン・キューザックの一人芝居に近いこの映画。もとはジャンル作家ではなかったが、娘の死をきっかけに幽霊屋敷、幽霊ホテルなどを題材に書き飛ばしている彼が、1408号室に来るなという葉書をもらって、娘の記憶に彩られ、忌避しているNYへ行くことにする。支配人のサミュエル・L・ジャクソン親仁が行くなとまくし立てるが、ジョン・キューザックは部屋に宿泊を強行する。そこからの幻覚か幽霊の仕業かの成り行きはネット内でも話題になったようだが、どちらにせよ、「部屋」の力によるものだろうから、超常現象によるものだと僕は断定しておく。映画はラジオ付き時計(カーペンターズが流れるのは薄気味悪い)がカウントする60分、制限時間内の恐怖時間がスタートした当たりで、すっかり退屈になってしまった。

おそらく同じ原作者の映画化ということでキューブリックのシンメトリー画面を取り入れたりしているが、飛び降り者の幻影が、ホログラムっぽすぎるとか、全体の統一感を欠いた幽霊や妖怪変化が現れることで、ジョン・キューザックの過去など退屈の極みまでふっとばされてしまい、そこから展開が苦しい、尺が持たないと思ったか、観客を惑わすような演出をことさら大仰に行い始めるに至って、その手前勝手な演出ぶりを糾弾せずにはいられないという、こちらもまた勝手な正義感に駆られる始末だ。

最終的に妻と和解し、というところまで行き着くものの、この不届き者の監督・脚本家は「さあ、どっちが現実でしょう? これは」という後味を付随させてくれるので、最後まで幽霊譚を楽しめないということになっている。

えてしてAクラスの予算でホラーを撮ったものは、珍作、愚作に陥る。珍作は亡くなった石上三登志さんが「観るべきものがあるので珍作。どうにもならないのは愚作」と仰っていたが、本作の場合は愚作と断罪しておく。

 

岸川真