kshinshin's blog

ヨモヤマ話

映画「燃える昆虫軍団」

ウィリアム・キャッスルが関わっているというだけで、猥雑で楽しそうだと期待が膨らむ映画である。テレビで観た覚えがあるきりで、まともに観るのは初めてだ。

地震が起こって、教会もパニックになる開巻。ここで生物学者の妻が参加しているのだが、送ってあげると約束した老人は息子の車に乗り込んで、生物学者の妻を置き去りにして帰宅する。どうも老人の農場が震源地で、辿り着いたのはいいが、発熱する虫のせいで車ごと焼死する。ここの娘と恋人があれこれあるのだが、重要なのは地割れから現れた発熱する昆虫で、生物学者に恋人が相談に行く。そこで生物学者は発熱する昆虫を持ち帰り調べるが、外骨格が硬く、生殖機能もない虫だと知る。あちこちで火事が起こるので駆除方法を探るのだが、生物学者の妻は誕生日の食事会のメニューを考えていたら頭に虫が這い込んで、発火し、焼死する。

ここらの誰が主人公やらさっぱりわからないところは、イーライ・ロスも70年代の散漫型ホラーの啓示を受けているんだなあと観ながら分かる。

さて、生物学者は研究室(なんと1408号室である。足せば13というハッタリ)で半狂乱、さらに昂じて狂気になり、虫を改良する。で、自分でも「やりすぎた」と思うほど改良された虫は意志を持つまでにいたる。生物学者の妻の友人も食い殺し、挙句には創造主たる生物学者も殺して地底へ消えていくという、どうにも地獄な終幕で、燃えるということはどこへ、食うにいたるのはどうして、などと疑問の山を築かせる。表情筋が吊るほど苦笑を滲ませてくれるが、なにかインスパイアを与えてくれそうな隙間があって、悪い気がしないのは、ウィリアム・キャッスルの力の偉大さなのだろうか。ここの気圧をいじる面妖な装置には感心した。あまりに雑、かつローテクな味わいで、とても機能するとは思えないが、機能してしまうという力技は感服する。

 

岸川真