kshinshin's blog

ヨモヤマ話

映画「キャビン・フィーバー」

公開時は銀座シネパトスで観た。イーライ・ロスという名前を覚え、「ホステル」でも感心頻りだった。公開された時はデイヴィッド・リンチ褒め言葉で誘われたのだ。アンジェロ・バダラメンティが音楽を提供している。

再見してやはり、イーライ・ロスは才人だと思った。ノーテンキな大学生5人組が山小屋を借りて休日を過ごしにやってくる。中学生時代から憧れの彼女と一緒の男は、なんとかして彼女と交接したがっているがモジモジ煮え切らず、彼女もまた交接したがっている彼の気持を知っていながら、接吻だけでお預けという関係。いっぽうで賢そうな金髪とブルネットと女は山小屋につくと派手に交接する。もう一人のちょっと足りない餓鬼大将はライフルでリスを撃ちに行く。そこで瀕死の地元民に出会うが間違って撃ってしまい、この地元民の有り様に怯えて逃げてしまう。キャンプファイヤーの折に撃たれた地元民はやってくるのだが、皆で怯えまくった挙句に火刑に処すようなことになる。皆が皆、後味が悪い空気が漂うが、そこまで本気で悩んでいるのかというとそうでもないので、こいつらは死ぬべきだという了解が観客とイーライ・ロスで結ばれる。

貯水池に落ちて絶命した憐れな地元民の体液がぐるりと山小屋へ行き、何も知らずに悩んだり困ったりしている憧れの彼女が地元民同様に変わり果てる。手で犯し始めた交接志願の男の、弱ったから行為に出るという気色の悪さがいいのだが、一転、下半身が爛れた彼女に怯え、皆で彼女を隔離する。あれこれやってくうちに、ちょっと足りない餓鬼大将も感染し、救けを求めに行った先で逆に追われ、山小屋に戻って、交接志願男と組んで追手を殺すが自分も撃たれて死ぬ。この交接男は金髪男の恋人と交接して、気晴らしをするが、恋人も感染していて犬に食われてしまう。犬は憧れの彼女も食い散らしていて、交接男が発見し、襲ってきた犬を撃ち殺す。もう憧れの気配もない彼女へとどめを刺した交接男は脱出を図るものの、迂闊な地元警察によって始末される。

基本的に迂闊な登場人物が迂闊に死んでいくのがホラー常道であり、この作品はそれに則って作動している。けれど端々に脱臼気味のシーンを挿入し、はじめ観ているとこいつが主人公かと思う、そこを抹消してしまう作劇はイーライ・ロスならではであることが確認できた。

みんなして死んでしまえという、どん底感とユーモアの同居、ちょっぴりセンチメンタルな感じは彼の持ち味なんだろう。

 

岸川真