kshinshin's blog

ヨモヤマ話

映画「誘拐の掟」

アルコール依存症を脱するため、会へ参加している無免許探偵マット・スカダーが、麻薬ディーラーから依頼を受ける。はじめは断るが、ディーラーの真剣な態度に動かされ犯人追跡を始める。彼の妻が誘拐・惨殺されたのだが、どうやら連続殺人らしいと判明し、追っていくうちに、共犯になったピーピングトムの太っちょや、血液に異常がある黒人少年と知り合ったり、そのあたりのやりとりが渋くて、微笑ましく、好ましく感じた。スカダー自身が酔いどれの末に犯した罪についてや、犯人絡みのDEAの動きや、黒人少年、ディーラーの兄など、やや尺のせいか、説明不足で、そこをもっと見せてくれたら、こういう映画なのだから、謎がどうのよりも、雰囲気が深まって、映画もよりよくなったろうと惜しむ。突然の死など、緊張感に満ちた描写も巧く、ラストの断酒会の誓いと犯人を狩る場面のカットバックはあざといながらも、あざとさが成功し悪い気はしない。むしろケレンが効いていて、感心した。犯人の片方が憎たらしいおしゃべりだったり、もういっぽうが「ファーゴ」の殺人鬼のようにむっつりしているところも、ある種の類型だが、外れていないので、怖い。また彼らが誘拐強姦殺人鬼で、セックス絡みであることも、嫌悪感と映画の手触りにザラザラ感を与えている。そういう映画の中に、無理なく溶け込んでいるリアム・ニーソンは、やはり巧いのだろう。彼の場合、かつてのスタローンやシュワルツネッガーと違い、その役が前に立ち、ニーソンの個性は後ろになる。

余談だが、ジャージーフィルムが製作に噛んでいた。プロディースにダニー・デヴィートの名を見つけた時、外れはないかなと思ったら、やっぱり正解だった。また、スペシャル・サンクスにスティーブン・ソダーバーグの名前もある。

 

岸川真