kshinshin's blog

ヨモヤマ話

映画「チャッピー」

ニール・ブロムカンプの新作だ。ヨハネスブルグの治安悪化に伴い、兵器開発会社が自律型ドロイド警官を開発し、投入される。ドロイド投入は成果を上げるが、計画者の若い男が理想なのは人工知能付属のドロイドだ。いっぽうで「ロボコップ」の出来損ない攻撃ロボそっくりの格好をした、人間が脳波で操作するロボを開発した元兵士は若い男が失脚しないかと祈っている。人工知能が出来て、5日で壊れる22号に挿入し、それがチャッピーと名を得る。ギャングスタが親代わりのチャッピーは成長する。そして同時に元兵士はドロイドを全て機能停止させて、ヨハネスブルグを無政府状態に戻し、自分のロボを投入し、ライバルを一掃しようと暴れまくる。チャッピーは「意識」を見つけ、死を乗り越えられる方法を実行する。魂と肉体という問題を後半は濃厚に扱うわけだが、いろいろ顧慮しない、これが正解なのだという演出に、ニール・ブロムカンプの感覚が露出していて、心地良く感じる。人間はダメだと。

総合的に散漫なところもあり、いまいち迂闊すぎるキャラクターが揃って、イラッとくる場面が少なくないものの、ニール・ブロムカンプの考え方を伝えたい腕力で、最後まで許しながら観てしまう。

次回作では、彼の擬似ドキュメンタリ挿入や監視カメラ画像とドラマの融合という話法を棄て、造形面でもステロタイプを避け、より若く、より野心的なアートワークを追求すれば、きっとSF映画の鬼才として揺るぎない監督になるはずと、余計な心配をしている。頑張れ、ニール・ブロムカンプ。

 

岸川真