kshinshin's blog

ヨモヤマ話

映画「イーライ・ロス in ザ・ストレンジャー」

ザ・ストレンジャーと聞いてオーソン・ウェルズを思い出したが、どうでもいい話だ。イーライ・ロスがプロディースした本作は感染とか何とか書いていても結局のところはヴァンパイアである。

16年前に妊娠をきっかけに別れた妻を探して、夫が火山の麓にある、入江の街にやってくる。このロケーションがまず素晴らしく、ハッとした。妻は他界し、遺された子供は看護婦の養子になっている。夫が墓地で暴漢に襲われ、その暴漢の父親が警部補で、グルになって事件を隠蔽しようとするが、基本的に不死である夫は蘇生し、何も知らない息子に救けられる。ここで歯車が狂い、暴漢は夫と息子を狙い、返り討ちに遭い、その復讐に燃える警部補は夫を逮捕し、息子も亡き者にしようとする。夫は体を張って守りぬくが、養母が息子を助けたい一心で重篤の警部補の息子、つまり暴漢をヴァンパイア化させることで救ける。けっきょく、暴漢ヴァンパイアはやっぱり暴漢で、さんざん暴れ、親父の警部補との約束も反故にする。親父も親父で諦めずに夫とその息子を消そうとして死んでしまう。息子をヴァンパイアにしたくなかった夫だが、これもけっきょく、息子もヴァンパイアになってしまう。

一対の父子を描き、吸血鬼の血族の哀しさも湛え、90分におさめているところが好感がもて、飽きさせない出来になっている。印がどうのこうのという話が未解決であったり、息子はこれからどうすんのさ、という気になるところはあるけれど、一作で終えておいたほうが良さそうに思うぞ。

イーライ・ロス節は復讐というテーマくらいで、吸血無宿というか、そういう人情話になっているので、別段、イーライ・ロスを歌わなくともよかったように思うが、それがなければ観なかったことを考えると、つけておくのも効果があるものだなと、書いていて一本取られた気がする。

負けたよ、イーライ・ロス

 

岸川真