映画「ニーチェの馬」
ニーチェが目撃した馬の挿話というのが全然気にならないので、タル・ベーラの新作など観なくていいと思っていたが、滝本誠氏が褒めているというか、ジャガイモの映画というので、それならばと思い、観た次第。
強風荒ぶ風景とムッツリした人物が馬が荒れたので家にいたり、遠くから騒がしい奴らが来たので迷惑したり、井戸が涸れたりと、なかなか大変な日々である。やはりジャガイモの食い方が気になるので、そこへ眼が行く。親爺は凄まじく早食い。娘はゆっくりぼそぼそ食う。塩もないのか、どういうものかしらないが、美味そうだ。
とにかく抽象化された具体的な日常と明確な台詞とナレーションによって、退屈することもなく、強度のある画面構成で押し切られる。
剛直な映画であり、たいへんなものだと思った。
(岸川真)